民主党公約 これでは政権を託せない
2012.11.28 03:16 [主張]
民主党の新マニフェスト(政権公約)は「古い政治に戻るのか。改革を進めるのか」と訴え、政権継続を求めている。
まず民主党が総括すべきは、旧マニフェストに明記しなかった消費税増税法を成立させ、無駄削減で16・8兆円の財源を生み出す約束を守れなかったという事実だ。
野田佳彦首相が「過去3年間の反省と教訓を胸に刻む」と、政権の迷走を謝罪したのは当然だが、ばらまき批判を受けた高校授業料無償化などの重要性をなお主張した。本当に総括したのか。
肝心の日本が直面する危機をどう打開するかの処方箋としては、極めて不十分な内容だ。
中国が奪取の動きを強めている尖閣諸島について「領土・領海の守りに万全を期す」としたが、「尖閣は平穏かつ安定的に維持・管理する」という野田政権と同じ方針を示すにとどまった。
中国を刺激するのをひたすら避けるやり方が何の成果も挙げていないことを忘れたのか。
自民党の安倍晋三総裁が公務員常駐など尖閣の統治強化策を主張しているのを念頭に、野田首相が「強硬姿勢や排外主義」と批判した文言もマニフェストに盛り込まれた。「国民や国を危うい道に迷い込ませる」とも指摘したが、危うい道に追い込んでいるのはどちらだろう。
「日米同盟の深化」をうたっているが、迷走させた米軍普天間飛行場移設問題などを進展させる具体的方策は示されていない。
問題は民主党が結党時の基本理念にある「民主中道」をもとに、中道路線を際立たせようとしている点だ。首相は「中庸」という言葉を繰り返している。
安倍氏や日本維新の会の石原慎太郎代表が憲法改正などを打ち出していることに対抗するためだろうが、「中道」が必要な政策をとらない無責任さを糊塗(こと)するものになっているようにみえる。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は日中韓自由貿易協定(FTA)などと「同時並行的」に進めるが、「政府が判断する」との文言が加わり曖昧になった。その一方で「原発ゼロ」を目指す姿勢は鮮明になっている。
民主党が大量離党者を出した原因は政策の詰めの不十分さだ。主要政策の方向付けが曖昧なままでは、政権をもう一度託すことなどとてもできない。