賛成意見
石破茂元地方創生大臣は、中央公論の対談で、ふるさと納税とは愛称で、本質的には寄附制度だ。東京が抱える課題への対応は、地方の振興と不可分一体で、両者をつなぐ方策として寄附制度はあってしかるべき。ふるさと納税で大損したのは東京二十三区と政令市だ。そこに共通するのは、財政に窮していないから、まあ、いいかということだと理解している。二十三区は返礼品を用意していないところが多く、記念品なんて書いてあって、何が送られてくるかわからない区もあり、そこに哲学があるとは思えない。地方だけ得をして東京は割を食っているとかいった議論に矮小化すべきではない。都市部の自治体は税が余っていたことをふるさと納税が証明してしまった。過当競争だと批判する向きもあるが、逆にどうして自治体が競争していけないのかと問いたい。民間は熾烈な競争の中にいて切磋琢磨しており、自治体だけが競争しなくていいのか。ふるさと納税で自治体がどんな努力をするかで自分たちの暮らしが変わるのだから、選んだ首長がどれほど課題に真剣に取り組むのか評価して、次の選挙の判断材料にする主権者意識を変革する上で格好のサンプルになったと評価していると述べています。
さて、過度の返礼品競争には加わらず、寄附文化の醸成を目指し、国に制度改善を要望するという世田谷区の対策をあえて講じないという保坂区長の政策決定は、財源の流出を放置し、ある意味、地方を応援すると宣言していると解釈すれば、ふるさと納税という愛称の寄附制度本来の目的を支持すると逆説的に考えることができなくもありません。しかし、私は、世田谷区民としてこの二年間、百二十三億円もの本来世田谷区に入ってくるはずだった税金の他自治体への流出が区民サービスの低下につながると確信しますし、税源流出の責任は政策決定した区長にあるということだけは確認できたと思います。この点は、有権者である区民にしっかり報告し、区政への評価、検討を促してまいりたいと思います。
来年度の寄附金収支はさらなる赤字増大が懸念されますが、区長には他人事なので、涼しい顔でいられるのでしょう。これは世田谷区行政の保坂リスクにほかなりません。保坂区政六年間でスクラップした施策の合計額は約三億円にすぎず、折からの景気回復による税収の増加に任せて肥大化を続ける放漫経営と言えます。今予算委員会では、投資的経費の増大による財政の見通しの甘さを指摘されていましたが、先を見通した行財政改革が必要です。健全な財政維持のためにあらゆる方策の検討と実施を要望し、賛成の意見といたします。